潮にのってきた彼女
「翔瑚!」


アクアは海面に顔をのぞかせていた。

砂の上に隣同士で座る。


「どうしたの? 朝早くに」

「なんか、この時間がよかったんだ」


始まることがたくさんある、朝を選んだ。


「今日は、アクアに言うことがあるんだ」

「何?」


アクアは至って普通な様子で、ただ小首を傾げていた。
だから俺も、さらりと言えるような気がした。


「好きなんだ」

「え?」

「アクアのことが」


髪をしぼっていたアクアの手が止まった。
久しぶりに、青い瞳をまじまじと見つめる。


「好き、だけなら当然かもしれない。わざわざ言うまでもないことだと思ってる。わかりやすく言えば、アクアを、女の子として愛してるってこと」


自分でも、ここまでストレートに単語を並べられるとは思わなかった。
昨日の出来事や、アクアの澄んだ瞳がそうさせたように思う。

恥ずかしくて目を逸らしたくなったが、ぐっとこらえた。


「だから何ってわけじゃ、ないけどさ、今日は、それを伝えに来たんだ」


アクアはしばらく目をしばたいていた。
言葉の意味を、寸分の間違いもなく受け取ろうとしているようだった。

やがて微笑みが浮かび、合わせたままの瞳に輝きがちらつく。
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