潮にのってきた彼女
そこから2本列車を乗り継ぎ、目的の街に到着した。

荷物を担いで改札を出る。
息を吸う。けほっと咳き込む。予想以上に何かの濃度が高かった。
小さく深呼吸をするとすぐに慣れはしたが、煙草の匂いが近くからしたのですぐにそこから離れた。


中央口から出て車を探す。
少し変わったアイスブルーのワゴン車。
迎えに来てくれているはずの、父さんの車だ。


「翔瑚」


振り向くと、予想通り、父さんだった。車の窓から顔を出して手を振っている。
俺は手を上げて応え、車に乗り込んだ。


「元気に、してたみたいだな。顔つきが、目に見えて変わっている」

「本当に?」


やたら座り心地のいいシートには、ガソリンの臭いが少しこびりついていた。
車の息遣いは聞こえるし、目に映る景色は冴え冴えとしている。

島での4ヶ月は確実に俺を変えていた。
俺の五感を変えていた。


縦長の景色たちが次々に流れていく。

異国というと大袈裟だが、見知らぬ土地、に、来てしまった、ぐらいには感じていた。生まれ育った場所のはずなのに。

島での居心地が、良すぎたせいかもしれなかった。
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