潮にのってきた彼女
いかにも家族団らん、という感じで喋って、昼ごはんを食べた。

自分の部屋で少しだけ眠る。
久々に入ったその空間は小さく感じた。
だけれどその分安心感があった。安全を保障されているような、守られた感じ。
ここにいれば、何も恐れることはないような気がした。

前の俺もそんなことを思っていただろうか。


3時ぐらいに起きて、進也と遊んだ。
TVゲームをするなんて当然4ヶ月以上ぶりだったもので、俺はあっさり惨敗した。進也は嬉しそうだった。

結実には勉強を教えた。
さすがに小学5年生の内容では、問題なく教えられた。
しかしまともに教えられるのはあと何年ぐらいだろう、と思った。3年後には、自信がない。


和やかに夕飯のすき焼きを食べ終わった。
テレビを見たあと、父さんは部屋にひっこみ、結実と進也はそれぞれ風呂に入って、ベッドに入った。
俺はリビングでばあちゃんに電話をしたあと、久々に中学の卒アルなんかを見返していた。
アイロンがけを終えた母さんは、ソファーにどっかりと座り込んだ。


「翔瑚。お母さん、元気だった?」


肩をぱきぱきと鳴らしながら母さんは尋ねた。年はいくつだっただろう。俺を生んだのは、結構若い時だったらしいが。


「うん、すごく。倫子によろしくって言われてきた」

「変わらないのね。それなら安心」


母さんは立ち上がり、冷蔵庫に向かった。ビールを取り出してプシュっと空ける。
飲み下しながら、俺の目の前に座った。


「あんたが島へ行くって言い出した時」


少し違った母さんの声色に、アルバムを閉じる。
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