潮にのってきた彼女
「けど、どうせ考えてもどうにもならないことなら」


これは甘い考えだ。たぶん、子供の考えだ。だけど、


「考えるよりも、一緒にいたいと思った。奇跡みたいなこの時間が増えればいいと、ひたすらに思ってる」


もしこれが間違っているというのなら、何が正しいのかを教えて欲しかった。


「とにかく、ずっと考えてるのは、出会ったことを後悔するとかそういうことだけはしたくないっていうこと。これは彼女にも伝えたよ。俺の結論は、結局いつでもそこに辿り着いてしまったんだ。


……それで、そうやっていて、本当に決めたり、選んだりしなければいけなくなったら、その時には、自分たちで決められるように、どの選択肢も潰さないために。

そのために、真珠を見つけないと、と思ったんだ」


「そうか」口の形だけで呟かれた一言には、とても温かみがあった。

目を細めて、しわの寄った口元に微かな笑みを湛えて、ばあちゃんは俺を見る。
今度は少女の気配はなかった。その表情は、少女だった過去を持つ、長い年月を生きてきた女性のものだった。


「ほんならこれは、あんたらのもんや」


片手ですっと、ばあちゃんは真珠の箱を俺の方に押し出した。


「私の役目はたぶん、ここで終わりや。ティートから預かったこの真珠。
あんたらが出会ったことは、必ずティートが望んだことでもあるはずや。

いっそ使うてまおかと思った時もあったけどな。大事に持っとった甲斐があったっちゅうもんや。

翔瑚の言うた通りでええ。
2人で共に選べるというのは、わたしからすればこの上なく幸せなことや。

この7つ真珠を、彼女のところへ持って行き」



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