潮にのってきた彼女
ばあちゃんは箱を持ち上げ、差し出すように俺の目の前へ持って来た。

戸惑って、ばあちゃんの顔を見る。強い眼差しが箱と俺とを一直線に射抜いてくる。

震える両手を出すと、ばあちゃんは力強くうなずいてくれた。


「ありがとう」


真珠は孫の手へと渡る。
感じる重みは大きな7つの宝石のせいだけではない。桐の箱の感触を確かめ、目を閉じる。

自分自身の母の母。それと、アクアの――母か父の、父。

2人の思いを、今、両手で受け取った。


「さあてと」


ばあちゃんは勢いをつけて立ちあがって言った。


「昼にせなな。千歳さんもそろそろ作業終わらせてはるやろ。翔瑚はどないする。また、
今から行くと言うても私は止めへんで」

「……今日は、やめとく」

「そうか。あんたの好きにしい。あんたが選ぶ時には、いつも自信を持ったらええねんで」


もう一度「ありがとう」を言って、俺は海に背を向けたまま、真珠の箱を眺めていた。





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