潮にのってきた彼女
「少しずつみんな変わっていく。俺たちは高校生で、まだまだ自由だ。選択肢を自分で作れて、自分で選べるんだ。

守られてばかりだったはずのさくが、自分から行動して、誰の保護下にもない無防備な状態で、人にぶつかっていった。

そうやって行動することは、まっすぐ自分の周りの環境を変えることに繋がるんだって、わかったはずだ。


これからのさくはきっと、1人でどこまででも歩いていける。自分で道を見つけて進んでいく。
俺たちと、同じように」


慧の家からも少し離れたこの場所を、待ち合わせに選んだわけがはっきりわかった。

川が海へと出て行く場所だ。淡水はいつ間にか海水と同化し、広い広い世界へ出て行く。急流も静寂も経験して、橋の下で川の水は海になる。太陽の光を反射させては眩しく光って、海はいろいろなものを受け入れる。


欄干から身を乗り出すようにして下を見た。
そして水平線。そして空。


俺は風でいい。そんなことを、アクアを相手に言ったことがあった。空と海は交わらないから。

ただひとつの意味だけを込めて言っていたその言葉をてのひらに乗せて、もう一度眺めてみる。

今度はその言葉は、前とは比べ物にならないほどの重みをを持って、言った俺自身のもとへ返ってきた。

交わってこそ、生まれるものがある。交わらなければ、生まれなかったものがある。


そういうことを確かに感じてから見た海や空や風は、今までと少し変わった色をしているように思った。
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