潮にのってきた彼女
「どうしようもないよ、これは。わたしたちにこれをどうにかする義務があったとしたら、翔瑚は見つけてくれたんだからあとはわたし……ううん、シェルライン家で、決めようと思う。

女王に黙って献上するか、処罰を覚悟で謁見を申し入れるか、それか……うん。

やっぱり、姉や従兄弟たちにも相談しないといけないと思うから」


早口で言い切られる。少し悲しくなったが、反論のしようはなかった。筋の通った意見だ。


「それじゃあ、シェルライン家に任せるよ」

「ありがとう。協力、してくれて」


箱を俺から遠ざけるように、箱をアクアの側に置きなおされる。


「……記憶」


あとは、そう、記憶を消すことだけ。

話すべきことは、もう、なくなってしまった。


「いつにしよう、か……」


ずっと先。本当はそう言いたかったし、言って欲しかった。それはアクアも同じだと思う。

でもどちらも何も言えなかった。それっていつ? という疑問も同時に存在してしまう。


手をつないで、黙りこくって、いつも見ていた海を見る。俺たちは同じ方を向いて黙る。

しびれを切らしたようにアクアの方を見ると、宝石のような瞳はとっくに違う方を向いていた。
意志の強そうな瞳は俺を見ていた。


「明日にする」


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