潮にのってきた彼女
やがて音符たちはひとつの低音にまとまり、穏やかに歌は終焉を迎えた。


「……すごい。こんな歌、初めて聞いた。」


アクアは恥ずかしげに微笑んでひざのあたりを抱え込んだ。


「これ、さっきの物語のあらすじを辿った歌なの。わたしが一番好きな歌」

「そうなんだ」

「叶わなかった、恋の歌ね」


瑠璃色は、これ以上ないというほど輝いていた。
光が零れる。

アクアはまた小さく唇を動かして歌を口ずさみ、海の上の世界を眺めていた。



しばらくアクアの整った横顔に見惚れていたが、大切なことを思い出した。


「あっ、時間……今日月曜だ」

「ゲツヨウ? あ、わかった。学校があるんだ」

「そ、う。知ってるんだ」

「わたしも昔行ってたもの。懐かしいなあ」

「昔……」


やっぱり、まだまだ聞きたいことは沢山あった。


「何時頃だろ。家から学校遠いから、6時半には出るんだ」


俺が言うと、アクアは水平線から顔を出している太陽を一瞥した。
< 35 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop