潮にのってきた彼女
淡い淡い
+Ⅰ
堅牢な造りではあるが、築60年以上なだけあって白茶けた塗装がところどころ剥がれている校舎。
傾いでいる教室は沢山あるし、床板は悲鳴を上げている。
しかし愛校心を持った生徒たちの熱心な掃除のおかげで、校舎にみすぼらしさは微塵もない。
それにこれほど多くの植物が生きていて、田んぼや菜園、池に畑の揃った敷地を持つ学校はそう多くないだろう。
正門では毎朝日替わりで先生たちが挨拶をする。
そして、それに返事をしない生徒はいない。
そんな「入江高等学校」に、俺は今通っている。
ハイビスカスに似た、めしべのぐんと突き出た花が咲き乱れる中庭を通り抜け、下駄箱に向かっている途中で、朔弥に会った。
「よっ! しょーご!」
「おう」
振り向かずともわかる高めのトーンの掠れた声。
返事をして歩調を緩める。
朔弥(さくや)の隣には、口を緩い一文字に結んだ朔乃(さくの)が歩いていた。
朔弥と朔乃、名前からも明らかだが、2人は双子の兄妹だ。
傾いでいる教室は沢山あるし、床板は悲鳴を上げている。
しかし愛校心を持った生徒たちの熱心な掃除のおかげで、校舎にみすぼらしさは微塵もない。
それにこれほど多くの植物が生きていて、田んぼや菜園、池に畑の揃った敷地を持つ学校はそう多くないだろう。
正門では毎朝日替わりで先生たちが挨拶をする。
そして、それに返事をしない生徒はいない。
そんな「入江高等学校」に、俺は今通っている。
ハイビスカスに似た、めしべのぐんと突き出た花が咲き乱れる中庭を通り抜け、下駄箱に向かっている途中で、朔弥に会った。
「よっ! しょーご!」
「おう」
振り向かずともわかる高めのトーンの掠れた声。
返事をして歩調を緩める。
朔弥(さくや)の隣には、口を緩い一文字に結んだ朔乃(さくの)が歩いていた。
朔弥と朔乃、名前からも明らかだが、2人は双子の兄妹だ。