潮にのってきた彼女
思った通り、その日は休憩の来るたび朔弥と慧に問いただされるはめになった。

それに対し俺は「何のことだか……」と、一点張り。我ながら相当無理があった。



そして放課後だ。

夏帆はいつもの通り下足で待っていた。


夏帆は俺に気づくと、小さな微笑を浮かべ、黙ったまま下足を出た。
俺は黙って夏帆を追った。



夏帆は中庭で足を止めた。

花壇の裏、人目を避けて俺たちは向かい合った。


「久しぶりだね……」


夏帆は制服の裾をいじりながら、俯き気味で言った。


「連絡、くれなかったね」


小さな声には間違いなく、俺を責め苛む感情が押し込められていた。

夏帆は朔乃と同じぐらい華奢で、肩幅も狭く、全体的に曲線でできた、女の子らしいシルエットをしている。
そして人気の高さを裏付けるような、可愛らしい作りの顔。肌は白くてまつげは長い。

しかしそのまつげに囲まれた瞳は、夏帆の意志の強さをよく表していた。強情そうな表情を作り出す。夏帆の強い視線に射すくめられると、情けない男たちは返事が容易にできなくなってしまうのだった。


謝るか黙っているか悩んでいるうちに、夏帆は続けた。
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