潮にのってきた彼女
可愛い、と思う。
愛しいの定義もわからない。

だけどやっぱり、俺の意見としては「可愛い」と「愛しい」は別物だ。

うまく説明はできないけど、そう思った。



しかし胸の内では、精一杯の笑顔を見せる夏帆への罪悪感が渦巻いている。

俺はこの感情から、逃げているのだ。



嬉しそうに、夏帆は俺の腰に手を巻きつけた。
どうやら許してもらえたらしい。


「絶対だからね。それと、今度、ひいらぎ岬行こ。あそこから見る夕陽が一番綺麗なんだって。今、私のクラスで噂になってるの。ね、約束」


俺の肩より下にある、夏帆の頭をポンポンとたたいた。


妹のわがままを聞いている兄のような気分になった。
なんて言ったら、夏帆はまた拗ねてしまうのだろうけど。


夏帆は巻きつけた自分の腕に、顔をうずめた。


「……翔瑚好き」


夏帆の背中に手を置き、苦笑に近い笑みを浮かべた。






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