潮にのってきた彼女
ながじぃに連れられ、今度は作業所のようなところに来た。


「さっきの核入れなんかも、やるんはここや」


ながじぃは大きな箱を抱えていた。

先頭きって朔乃が覗き込む。それに続き、俺たちも箱の中を見た。


「すげー! これ、売り物?」


ガラス張りの箱にはきっちりと綺麗に真珠が並んでいた。数え切れないほどの数だ。

ひとつひとつでは淡い輝きだが、これほど揃っているのを見ると神々しいまでの光を感じた。


「売り物やで。新しいとこから依頼があってな、明日持って行くんや。正しい保存の方法も教えなあかんしな」


それから俺たちはめいめい自由に作業所を見て回った。


朔弥はながじぃについて回り、珍しいものをいろいろと見せてもらっている。

慧は売り物の真珠や、核入れに使うという細かな道具などを、朔乃は作業所中をくまなく見ているようだ。


俺はいくつか真珠を見ながら、アクアの探し物のことを考えていた。

フルフィルパール。どこに手がかりがあるかわからない。

大見得きったものの、どうやって探していけばいいのだろう。


「……ながじぃ」

「なんや?」

「あのさ、普通、真珠の大きさってどのくらい?」

「8、9mmにもなれば上等やな」

「だよなあ……じゃあ、これぐらいだったら?」


アクアのやっていたのと同じぐらいの大きさに、指を丸めた。


「そらあ大粒すぎるなあ。養殖じゃちょっとな。自然ものでも、見たことないぐらいやわ」

「ながじー、これ、なに」


俺が指を崩すと同時に、何かを覗き込んだ朔乃が質問をして、俺たちは朔乃の周りに集まった。
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