潮にのってきた彼女
朔乃の見ていた箱には、少し変わった真珠が入っていた。

尖った部分のあるもの、くびれのできているものなど、球形ではないものばかりだ。


「これはな、バロック真珠言うて、まあ不良品みたいなもんや」


ながじぃは箱を持ち、要領良く片手でガラス板を取った。


「売られへんいうこともないけど、なかなか不人気やから残ってまうんや。言うても、大体はきれーな球の形なんかしとらんと、どっか歪んでんのやけどな。よし、お土産や。1人1つずつ、持って帰ったらええ」


俺たちはお礼を言ってから、お土産を選びにかかった。

本当にいろんな形がある。三日月形や、まが玉のような形のもの。くびれが真ん中にあれば雪だるまに見えるし、少し上にくびれていればひょうたんだ。


いくつか見ていると、1つの真珠に目がとまった。

それは真っ白で、小さな楕円形だったが、尖った一部分の反対側が小さく窪んでいた。

少し視点を変えれば、ハート形に見えそうだったのだ。


大きさといい可愛らしかったので朔乃に教えようかと思った時、頭に洞くつのことが過ぎった。

探し物について何の情報も持って帰れそうになかったこともあって、その真珠はアクアにあげようと決めた。


「俺、これ」


朔弥は星に近い形のもの、慧はピンクがかった、球に近い形の真珠を選んでいた。

……何か、理由が必要だ。


「これ? 何でこれなんだ?」


案の定、朔弥は言った。


「いや、一番白いなと思って……」

「ハートだ」


うまく理由をつけられたと思うと同時かそれより先に、朔乃の一言に制された。
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