あの頃のキミはもういない
正直、俺は自分の気持ちから逃げてるだけだ。
そんなこと分かってる……。
だけど……


ブーブーブーブー

マナーモードにしていた携帯が震えた。
電話だ。


「何?」

『雅也か?今すぐ帰ってこい。今からお相手の方とお食事だ』

「……分かった」

プツッ


「……」

電話を切った後も俺はしばらく携帯の画面を見つめていた。


俺には……親父が用意した婚約者がいる。

あんな貧乏人となんかくっつけてたまるかって。

誰とくっつこうが俺の勝手じゃねぇか、っておもってたけど


ー「もし、愛奈って子と喋れば俺は何をするか分からない」ー

こんなのは脅迫だ。

だけど……この言葉どおりこのクソ親父は何をするのか分からない。

ガキの時に引っ越したのだって、俺を愛奈から遠ざけるためだ。

ガキの時はただの親父の仕事の都合で引っ越すんだと思ってた。
だから、あの写真だって愛奈に渡したんだし。

また愛奈と会って話が出来ると信じて……。


今なら分かる。

親父は手段を選ばないってこと。


だから……俺は愛奈を守るために愛奈から遠ざかった。

その行動が正しいのかはわかんねーけど、今の俺にはそうすることしか出来ない……。
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