あの頃のキミはもういない
翌日。

「愛奈ぁ~おはょ♪」

「おはよう!」

結衣に元気に挨拶する。


そういえばあの人、今日来てるかな?


「愛奈?」

「え?ううん、何でもない」

「そ。あ、そういえば今日体育だよね!?またやけちゃうよぉ~!」

「日焼け止めは?」

「あるけどさぁ~やっぱやけないの気持ちだけじゃん?」

「まぁ、確かに」

「はぁ~」

やけることがそんなに嫌なのかな?
夏だからやけるのは当たり前だと思うんだけど。



「まさかあの2人がそういう関係だったとはねぇ」

「でもお似合いじゃない?美男美女だし」



教室に入ってくる女の子達がそんなことを喋っている。


何の話だろ。


「確かに!それに佐川君なら幸せにしてくれそうだよね!」


え……?
さ、佐川……?
って……
雅也君のこと……?

やっぱり……昨日のは……


その瞬間周りの音が一切聞こえなくなる。


「ま、雅也……君?」

「……」


「婚約者かぁ。羨ましいなぁ」


こ、婚約……?
佐川君とあの女の人が……?


「ねぇ、その話詳しく聞かせてくれる?」

「え?」

結衣がいつの間にか女の子達に近づいて話しかけていた。


「佐川君のこと。婚約って、どういうこと?」


「……。うん、良いよ。あのね」

女の子は結衣の言うとおり話し始めた。


女の子達の話によれば
雅也君はお父さんから婚約をすすめられて、最初は断ってたけど、何故か高校生になってから婚約を認めたらしい
との事だった。


『婚約』……。

その言葉が私の胸にチクチク痛みを感じさせる。


どうして……婚約を認めたんだろう。

雅也君……会いたいよ。
会ってきちんと話がしたい。

ちゃんと雅也君の気持ち、聞きたいよ……。
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