あの頃のキミはもういない
「雅也君。どうしてそんなに冷たいの?私達、昔はあんなに仲良かったじゃない」


「っ……。うるせぇよ。昔と今は違うんだよ!それに、俺には婚約者がいる。一緒にいたら勘違いされんだろ。二度と近づいてくるな」


どうして……どうしてそんなこと言うの……?

今辛そうな顔してたじゃん……。

昔みたいに笑ってよ……。


「っ……ふ……う……」


また溢れ出てきた涙。

私、泣き虫だな。


「お、おい泣くなって!」


あ……。

あの時と同じだ。

ー「愛奈どうした!?またあいつらにいじめられたのか!?」ー


小さい頃。
1人だった私を支えてくれたあの暖かい手。


あの頃と何も変わんないね。


「馬鹿……馬鹿!なんでそんな酷いことばっかり言うのよ!私ずっと待ってたんだよ?ずっとずっと雅也君に会える日をずっと……。なのに……なのにどうしてそんなことばっかり言うのよ!」


違う。
ホントはこんなこと言いたくないのに。
心とは反対のことが出てくる。


「っ……」


どうして……どうして名前呼んでくれないの……?


「昔みたいに笑ってよ!優しく頭撫でてよ!昔みたいに……優しく……してよ……!」


「愛奈……」

!?
声は小さいけど今名前読んでくれた!
それだけでも嬉しく感じる。


「ずっと……待ってたのか……?俺のこと」

「そうだよ……だから高校で見つけて、嬉しかったのに……」

「……ごめん。俺の勝手で愛奈傷つけた。自分の意見正当化しようとしてた」


そう言って、雅也君は私を優しく抱きしめてくれた。


「雅也く……」

今度は嬉し涙。
私ってホントに泣き虫だな。



雅也君に抱きしめられると雅也君の体温が伝わってくる。
雅也君に触れられた。

雅也君、やっと……会えた。


私は雅也君の優しさにそっと触れた。


その光景を婚約者のあの人が見ているとも知らずに。
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