あの頃のキミはもういない
ー愛奈said

ガチャンッ!

家の扉が勢いよく開いた。


「ま、雅也君……」

中から出てきたのは雅也君だった。

でも、なんだか違う。

顔が……とても怖い。


「愛奈。中には……」

「雅也。いきなり走り出すな」

雅也君が何か言いかけた時、雅也君のお父さんが現れた。


「親父……」

「お嬢さん。家の事を知って、ここまで来たのか?」

「っ……はい」

少しドキッとしたけど、答えた。


こうなる事は覚悟してたから。


「で、俺にどうして欲しいんだ?」

何故か、雅也君のお父さんは笑っていた。


「……ます」

聞こえるか聞こえないかの小さな声で私は言った。


「あ?」

「雅也君から離れます」

私はキッパリと雅也君のお父さんを見て言った。


「!?あ、愛奈……」

雅也君はとてもビックリしたようだった。


「そうか」

「はい。そうすれば私達の家族に害が及ぶ事もないし。何より、雅也君を困らす事はありません」

「ほうー。愛されてるな雅也。この子に感謝して婚約を認めろ」

そう言って、雅也君のお父さんはその場を去ろうとした。

私も去ろうとしたその時

「ふざけんな……」

雅也君の声が低くその場に響いた。
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