シンデレラを捕まえて
のろのろと駅舎まで戻ったときだった。
「穂波さんに用事だったんじゃないんですか?」
背中に声がかかってびくりとした。振り返れば、原付バイクを押した優真さんが立っていた。
「さっき、工房を覗いていましたよね? どうしたんですか?」
気付かれていたのか。もしかして、穂波くんにも?
さっと血の気が引いた私を見て、優真さんはくつりと笑った。
「穂波さんは、全く気付いてませんよ?」
「あ、そう、ですか」
「美羽さん、でしたよね? 穂波さんと付き合ってるんですか?」
「あ、う……ん。そのつもり、だけど」
「そうですか。それなら言うことがあるので、ここまで来たんです。
あたし、穂波さんのことずっと前から好きだったんです。だから、貴女の存在くらいで諦めませんから」
はっきりとそう言って、優真さんは続けた。
「自信、あるんです。あたしのほうが絶対、穂波さんの仕事の助けになれる。巧さんと幸恵さんみたいに、お互いを成長させられる関係を築けると思うんです」
ふっと、さっき見た光景を思い出す。確かに、私は鉋の扱い一つ知らない。彼の仕事の手助けなんて、できない。
「今も、毎日仕事を教えてもらってるんです。この間は泊まらせてもらって、遅くまで勉強させてもらっちゃった。穂波さんの仕事のお手伝いもできたし、すごく楽しかった」
ふふ、と優真さんが笑う。さらりと綺麗な黒髪が揺れて、やっぱり綺麗な子だなと思った。
「……そう」
「大切な人の支えになりたい、手助けしたいっていうときに、出来る自分でいたい。だからあたしは頑張るし、それができない貴女には負けません!」
胸を張って、優真さんはそう言い切った。
たしかに、そうだと思う。私じゃ、穂波くんの助けにはならない。家具を作る技術なんて持っていないし、知識すらない。
だけど。
「穂波くんは、何も持っていない私でも好きって言ってくれたの。私はその言葉を信じて出来ることを頑張りたいと思ってる。優真さんの言う通り、私は何も手伝えないかもしれないけど、それなら私なりに支えられることを見つけたい。
だからごめんなさい。優真さんにそう言われても、はいそうですかって簡単に諦められない」
そう言うと、優真さんが顔を赤く染めた。ぐっと唇を噛む。
「穂波さんに用事だったんじゃないんですか?」
背中に声がかかってびくりとした。振り返れば、原付バイクを押した優真さんが立っていた。
「さっき、工房を覗いていましたよね? どうしたんですか?」
気付かれていたのか。もしかして、穂波くんにも?
さっと血の気が引いた私を見て、優真さんはくつりと笑った。
「穂波さんは、全く気付いてませんよ?」
「あ、そう、ですか」
「美羽さん、でしたよね? 穂波さんと付き合ってるんですか?」
「あ、う……ん。そのつもり、だけど」
「そうですか。それなら言うことがあるので、ここまで来たんです。
あたし、穂波さんのことずっと前から好きだったんです。だから、貴女の存在くらいで諦めませんから」
はっきりとそう言って、優真さんは続けた。
「自信、あるんです。あたしのほうが絶対、穂波さんの仕事の助けになれる。巧さんと幸恵さんみたいに、お互いを成長させられる関係を築けると思うんです」
ふっと、さっき見た光景を思い出す。確かに、私は鉋の扱い一つ知らない。彼の仕事の手助けなんて、できない。
「今も、毎日仕事を教えてもらってるんです。この間は泊まらせてもらって、遅くまで勉強させてもらっちゃった。穂波さんの仕事のお手伝いもできたし、すごく楽しかった」
ふふ、と優真さんが笑う。さらりと綺麗な黒髪が揺れて、やっぱり綺麗な子だなと思った。
「……そう」
「大切な人の支えになりたい、手助けしたいっていうときに、出来る自分でいたい。だからあたしは頑張るし、それができない貴女には負けません!」
胸を張って、優真さんはそう言い切った。
たしかに、そうだと思う。私じゃ、穂波くんの助けにはならない。家具を作る技術なんて持っていないし、知識すらない。
だけど。
「穂波くんは、何も持っていない私でも好きって言ってくれたの。私はその言葉を信じて出来ることを頑張りたいと思ってる。優真さんの言う通り、私は何も手伝えないかもしれないけど、それなら私なりに支えられることを見つけたい。
だからごめんなさい。優真さんにそう言われても、はいそうですかって簡単に諦められない」
そう言うと、優真さんが顔を赤く染めた。ぐっと唇を噛む。