氷姫[未完]
「私、用事思い出した」
あからさまに不自然だが、言葉がそれしか出てこなかった。
立ち上がれば、部屋を出ようとした。
ガシッ
強く手首を握られて、動きがとまる。
「動揺しすぎ。キスしたことは、謝る。だけど、お前の事好きなことだけは忘れんな」
小さく頷いた。
「お前と付き合いたいとか、今は思ってねぇから。今伝えるつもりは、なかった。まぁ、気にすんな」
また、小さく頷いた。
漣の顔が見えない。
少し悲しそうな、優しそうな声が響きわたる。
「なぁ、いい加減喋ってくれねぇか?」
「うん」
笑顔で返事をすれば、振り向いた。
漣が、いつものように笑っていたので嬉しかった。
少し、安心した。