氷姫[未完]



「私、用事思い出した」




あからさまに不自然だが、言葉がそれしか出てこなかった。




立ち上がれば、部屋を出ようとした。




ガシッ




強く手首を握られて、動きがとまる。



「動揺しすぎ。キスしたことは、謝る。だけど、お前の事好きなことだけは忘れんな」


小さく頷いた。



「お前と付き合いたいとか、今は思ってねぇから。今伝えるつもりは、なかった。まぁ、気にすんな」



また、小さく頷いた。



漣の顔が見えない。



少し悲しそうな、優しそうな声が響きわたる。




「なぁ、いい加減喋ってくれねぇか?」




「うん」




笑顔で返事をすれば、振り向いた。




漣が、いつものように笑っていたので嬉しかった。



少し、安心した。





< 16 / 40 >

この作品をシェア

pagetop