血液は恋の味
リディアも勿論そうであるが、その吸血鬼にも幸せになってもらいたいというのか、神父の考えであった。
何かに対して必死になるということは、それだけ相手に好意を抱いている証拠。
そして何より、不埒な動機で近づいてくる人間より純粋で、真剣な気持ちが伝わってくる。
「……フレーゼル」
「混血児のことですね」
「今では多種族同士の付き合いなど、珍しいものではない」
神父の言葉は、明らかに二人を一緒にさせようという魂胆が含まれていた。
実のところ、リディアの将来が心配で仕方がなかった。
このまま神の下に仕えてもいいが、女性として生まれたからには幸せな結婚をしてほしいと思う。
リディアと神父の間に、親子関係などない。
しかし我が子以上に、彼女の身の振り方を考えてしまう。
多くの者達から求婚され、今は断っている。
だが、何れは限界に近づいてしまうだろう。
その時、判断を誤れば――
神父にしてみたら、それが心配であった。誤った結果、ろくでもない男に捕まってしまったら身も蓋もない。
だからといって、一箇所に留めておくのは可哀想だ。だからこそ、好きな相手の登場を願う。
「私が、誰かを愛することになりましたら――」
「喜ばしいことだ」
「ですが、私がいなくなってしまいましたら、神父様はお一人になってしまいます。そのようなことは、できません」
心優しいリディアの想いに、神父は微笑み返す。そして、自身が足枷になってしまうことを拒絶した。
確かにリディアがいなくなってしまったら、生活面に支障をきたしてしまう。
だからといって、それを理由に縛り付けることはできない。故に神父は、巣立ちを願った。
それがリディアという女性を護る最善の方法であり、何より神父は可愛らしい子供を見たいと思っていた。
血の繋がりのない最愛の娘が生んだ子供は、どのような顔をしているのか。
時折、そんな夢を見るという。
そのことを笑いながら言う神父であったが、決して冗談ではない。それは本心であり、親心というものであった。
「その者は、次はいつ?」
「毎日、プレゼント持ってきます」