揺らめく焔
もう一度、唸る。
「何が不満だ。」
「女心がわかってない!」
「虚実を言うのが良いのか?生憎、そういう性根は持ち合わせていない。」
「もういいですぅー!」
真剣に返すシャルドネにそっぽを向く。

それから、軍に着くまで、お互いに無言だった。
シャルドネのヒールとリコリスのヒールの音だけが聞こえる。
彼の所属は、軍の施設の隣にある役所と軍の第三部隊だ。
第三部隊は書類管理や情報を担っている。
役所は、軍が管理する施設である。
納税や大きな事件があれば向かうようにしていて、基本的には部下に委ねている。
「シャルドネー!!」
「!」
廊下の向こう側から猛スピードで誰かが来る。
それが何なのかは直ぐに理解した。
「あぁ……シャルドネ!!」
抱きつこうとするのをひらりと避ける。
「逃がさない!!」
その人も素早い反射神経で身を翻し、今度こそ抱きしめた。
「……」
観念したようにシャルドネは大人しくなった。
「全くー!照れ屋なんだからぁ〜!!」
「やめて下さい。姉上様。」
「や・め・な・い♪」
「……」
シャルドネは絶句して、あさっての方向を見た。
「もっとフランクに!おねーちゃんだぁーいすきって、言ってもいいのよー??」
「姉上様、武芸の面では尊敬しております。」
「やだー!堅苦しい!よそよそしい!!!!」
「政務がありますので、用事がなければ失礼したいのですが。指揮官殿。」
女の役職名を言い、政務に向かうように暗に催促する。
「むー!」
女はシャルドネを離すと、リコリスに向き合う。
「そうだ。リコリス、少しいいか?」
「はい。クレアフィール閣下。」
先程の態度がなかったかのように凛とした口調の、クレアフィールと呼ばれた女にリコリスはついていく。
シャルドネは踵を返し、政務室に向かった。

少しすると、来客があった。
ノックする音にシャルドネは扉を開ける。
「シャルドネ、第三部隊長。」
硬い口調で言う男性を彼は知っている。
「クロエ元帥殿。」
そう言うと、一礼する。
中へ案内するとクロエは椅子に腰掛け、シャルドネを睨むように見る。

ここでの地位関係では、最高地位が元帥と呼ばれる階級だ。
武芸・頭脳・人望・家柄において秀でており、全ての責任と権限を持っている。
その次に、司令官がある。
司令官は外交、指揮官への命令、最終決定がある。
そして、指揮官という順番だ。
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