揺らめく焔
指揮官は軍を動かす権限がある。
その配下に部隊を率いている。
現在は十五部隊あり、それぞれに部隊長と副隊長が居る。

ただし、第三部隊だけは違った。

六年前、シャルドネが副隊長の地位に就いて間もない頃——
以前はロランという男の配下に居たが、第三部隊に移動。
その後、以前の部隊長が元帥へ昇格。
副隊長が部隊長となり、シャルドネが副隊長として任命された。
当時、第三部隊の指揮は部隊長がとっていた。
第三部隊は敵国と戦い、壊滅。

部隊長も死に、副隊長であったシャルドネが跡を継いだ。

その後、副隊長不在の隊として存在している。

副隊長を不在にしている理由はシャルドネ自身がそれを選んだからだ。

そのことは元帥がよく知っている。
特に、クロエ・アルカード。
この人物は許可を出した張本人だ。

「約束は覚えているだろうな。」
「はい。」
シャルドネはクロエを見る。

『副隊長不在。故に、戦の前線に立つことは許されない。万が一があれば困るからな。それと——』

「元帥への昇格。」
それは、貴族へと身分を戻すということを意味していた。
「それは、バルドゥイーン元帥も望むことだ。この部隊も人が増えて、派遣こそ多いが安定している。それに、お前が望むのならばこのままでも構わない。」
「それでは、部隊長も副隊長も存在しない、元帥管理の隊となるのですか。」
「そうだ。これだけ、優遇しているのだ。断る理由はないな?」
クロエは淡々と言う。
「はい。」
シャルドネが答えると、クロエは満足そうに書状を手渡した。
「では。明日にでも手続きは済ませる。元帥任命の式は一週間後だ。」
「はい。」
クロエに頷いて、書状にサインした。
そして、封筒を受け取る。
「……ユーベルヴェーク家に何かあったのですか?これだけ優遇するとは異例です。」
「利用できる駒が欲しいだけだろう。」
そう答えて、出て行った。

入れ違うように、リコリスが戻ってきた。
シャルドネは封筒の中身を確認したあと、引き出しにしまう。
「遅くなりました。」
「構わない。」
シャルドネはそう言って紅茶を注いだ。
「アプリコットで良かったか?」
「ありがとうございます!」
机に置くと、リコリスは笑う。
「シャルドネさんは?」
「今はいい。」
シャルドネはそう言いながら、書類をする。
「そうだ。」
「?」
リコリスは首を傾げた。
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