揺らめく焔
ついに、元帥の任命式の日になった。
任命され、元帥の証である剣を受け取った。
「昇格、おめでとう。」
シャルドネの父、バルドゥイーン元帥が声をかける。
「ようやく、家族に戻れたな。」
「そうですね。」
感情を込めずに言う。
「挨拶は後日。……失礼致します。」
早々と去っていく。
別に嫌いではない。
だが、馴れ合うつもりもなかった。
(——何かを企んでのことだ。)
愛情など、心からの言葉など、期待するだけ虚しいと解っている。
「シャルドネ。」
その声に振り返ることはない。
(期待など……)
諦めを遮るように足音が追う。
「シャルドネ・ユーベルヴェーク。」
立ち止まれば、与えられた名前が呼ばれた。
「済まなかった。」
背に投げかけられた言葉に振り返る。
そこには深々と頭を下げるバルドゥイーンが居る。
そして、その後ろから女が歩いて来て、同じく頭を下げた。
その女はマリアンネ・ユーベルヴェーク。
シャルドネの母だ。
「何を謝ることがあるのですか。」
シャルドネは頭を上げるように促す。
「今まで利用してきた。私達の過ちですわ。」
マリアンネは申し訳なさそうな顔をする。
「こうでもしなければならない事情があったのでしょう。それに、生まれた時から私の役目は決まっている。今更、恨みも憎みもない。」
シャルドネは感情がこもってない表情をする。
「正直、感謝しています。こうして、必要としてくれたこと。私を使ってくれたことを。」
(それこそが、存在価値。)
そう言ってお辞儀をした。
「母上様、父上様。」
そう呼ぶシャルドネに二人は幼い日を重ねた。
『ははうえさま!ちちうえさま!……きょうはですね、けいこでほめられたのですよ。』
無邪気に言うシャルドネ
『では、もっと姉様や兄様を目指さねばなりませんね。』
『今は忙しい。』
それに応えるのは、更なる期待と無関心。
方や、褒められ愛される姉と兄達。
確かな地位を持った者とそうでない者の扱いの差だ。
今は元帥という地位に就き、その無邪気さは今や冷淡さへ変わっている。
まるで、全て諦めてしまったような瞳。
そして、利用された末に受けた傷。
「もう二度とあんなことはさせない。お前を利用しない。」
(家族として、守る。)
バルドゥイーンは悔やんでそう言った。
「だから、もっと信じて。貴方を愛することを許してくださいませ。」
任命され、元帥の証である剣を受け取った。
「昇格、おめでとう。」
シャルドネの父、バルドゥイーン元帥が声をかける。
「ようやく、家族に戻れたな。」
「そうですね。」
感情を込めずに言う。
「挨拶は後日。……失礼致します。」
早々と去っていく。
別に嫌いではない。
だが、馴れ合うつもりもなかった。
(——何かを企んでのことだ。)
愛情など、心からの言葉など、期待するだけ虚しいと解っている。
「シャルドネ。」
その声に振り返ることはない。
(期待など……)
諦めを遮るように足音が追う。
「シャルドネ・ユーベルヴェーク。」
立ち止まれば、与えられた名前が呼ばれた。
「済まなかった。」
背に投げかけられた言葉に振り返る。
そこには深々と頭を下げるバルドゥイーンが居る。
そして、その後ろから女が歩いて来て、同じく頭を下げた。
その女はマリアンネ・ユーベルヴェーク。
シャルドネの母だ。
「何を謝ることがあるのですか。」
シャルドネは頭を上げるように促す。
「今まで利用してきた。私達の過ちですわ。」
マリアンネは申し訳なさそうな顔をする。
「こうでもしなければならない事情があったのでしょう。それに、生まれた時から私の役目は決まっている。今更、恨みも憎みもない。」
シャルドネは感情がこもってない表情をする。
「正直、感謝しています。こうして、必要としてくれたこと。私を使ってくれたことを。」
(それこそが、存在価値。)
そう言ってお辞儀をした。
「母上様、父上様。」
そう呼ぶシャルドネに二人は幼い日を重ねた。
『ははうえさま!ちちうえさま!……きょうはですね、けいこでほめられたのですよ。』
無邪気に言うシャルドネ
『では、もっと姉様や兄様を目指さねばなりませんね。』
『今は忙しい。』
それに応えるのは、更なる期待と無関心。
方や、褒められ愛される姉と兄達。
確かな地位を持った者とそうでない者の扱いの差だ。
今は元帥という地位に就き、その無邪気さは今や冷淡さへ変わっている。
まるで、全て諦めてしまったような瞳。
そして、利用された末に受けた傷。
「もう二度とあんなことはさせない。お前を利用しない。」
(家族として、守る。)
バルドゥイーンは悔やんでそう言った。
「だから、もっと信じて。貴方を愛することを許してくださいませ。」