仮
┗親友の真意
「おはよー!ギリギリだったねー」
考え事をしながら朝ごはんを食べたせいで、またしても家を出るのが遅れてしまい、
チャイムぎりぎりで教室に駆け込んだ私を、杏は明るい声で出迎えてくれた。
私は深呼吸してから挨拶を返す。
「おはよ。杏は、早かったんだね」
「まあね!学校近いし」
杏が得意気に笑う。
髪をゆるく巻いて、ばっちりメイクしている杏は、昨日の二割増しで大人っぽかった。
特に気合いをいれた感はないので、どうやら、こちらがいつものスタイルらしい。
おそらく、昨日は本当にサボるつもりでいたから、スッピンだったのだろう。
……それでも十二分に可愛かったのだが。
雑誌から抜け出てきたような、キラキラした杏を見ていると、わずかに寝癖が残った髪を、ざっくりポニーテールにすることでごまかしている私が情けなくなってくる。
明日からは、杏の為にも自分の為にも、ちゃんとしよう。
そう決意した私が席につくと、衣袋先生がのんびり教室に入ってきた。
先生は、生徒全員がいることを確認すると、満足気に頷いて黒板に今日のタイムテーブルを書き出した。
すらすらと美しい字が黒板を埋めていく。
それによると、今日は、身体測定とクラスの役員決め、そして任意参加でクラブ紹介が催される予定らしい。