クラブ紹介……。


昨日、先輩が準備していた催しだ。


先輩の姿を思い出す。



……やっぱ夢に出てきた人に似ていた気がする。


夢に出てきた男の人の顔は思い出せないけど、サラサラの黒い髪は印象的だった。


声や口調も似ていたように思う。



もしあれが、本当に昔の私の記憶なのだとしたら、彼は先輩だったのだろうか。



……有り得ないな。


だって、夢に出てきた男の人は、中学生か、高校生くらいだった。


あれから9年も経っているんだから、もう大人になっているだろう。


やはり、今日見た夢は、今の記憶と混じって正確性に欠けていたのかもしれない。


そうでないならば、可能性は低いが、先輩の兄弟か親戚なのかも。



「かんな?」



杏の声に、現実に引き戻された私は、ハッとして周りを見渡した。


いつの間にか、クラスメイト達は移動を始めていて、先生の姿もなくなっている。



「更衣室混むから早く行こー?」

「え?更衣室?」

「身体測定だよー。話聞いてなかったの?」



私の机の前に、しゃがんだ杏が、訝し気に眉を寄せて、首をかしげる。



「悩みなら聞くから話してよー?」

「ありがと。でも、ちょっとボケっとしてただけだから大丈夫」



私は、曖昧に笑ってごまかし、席を立った。

杏は納得行かないようだったが、それ以上は聞いてこなかった。


そして、私を元気付けるように話題を変える。
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