「いい目の保養になるよー。……あ、ごめん、かんな。興味なかった?」

「え?」



杏が不安そうに私を見る。

しまった。

先輩の話が出たから、ついまた夢のことを考えて、ぼんやりしてしまっていた。

杏にはそれが、興味なさそうな表情に見えたのだろう。



「嫌なら無理して来なくていいんだよ?」



気を使ってくれる杏に、私は慌てて首を振った。



「違う違う。興味ないワケじゃないよ!むしろ興味ある」

「ホントに?」

「ほんとほんと!」



もう一度、先輩の顔を見たら何か思い出すかもしれない。


「先輩の顔を近くで見たい」



私がそういうと、杏は嬉しそうに笑って

「じゃあ最前列を陣取っちゃおっかな!」

と、はりきって言ったのだった。







「かんなー!こっちこっちー!」



人混みを掻き分け、宣言通り、最前列を確保した杏が私を呼ぶ。


3時間目が終わってすぐの休み時間。


任意参加だというのに、クラブ紹介の会場である体育館は新入生で賑わっていた。



「意外と人来るんだね」



私が感心してそう言うと、杏は「有名な部活多いからね」と教えてくれた。


それによると、ブラスバンド部と新体操部は全国大会の常連らしい。

野球部も何度か甲子園出場している県の強豪らしい。



「ま、アタシ達みたいに、朝倉先輩目当ての子もいるみたいだけどね」



杏がいたずらっぽく笑う。

確かに、私たちの陣取った司会席が1番よく見える席は、女の子の割合が多かった。



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