「あ、見てあそこ!先輩来てるよ!」



杏に言われて、舞台上に目を向けると、先輩は腕章をつけた生徒と何やら話し合って指示を出していた。

そして、それが終わると軽やかに舞台から飛び下り、こちらの司会席へと歩いてくる。



「センパーイ!」



杏が大きな声で先輩を呼び、手を振る。

昨日少し話しただけなのに。


可愛くて、自分に自信がなくてはできない行為だ。


遠慮のない杏に、私は思わず目を見張ったが、先輩はにこやかに手を振りかえしてくれた。


周りの女の子達が羨ましそうに杏を見る。


杏はそんな目線を少しも気にとめず、「今の感じ。アタシ達のこと覚えててくれたっぽいね」と笑った。



「杏のタイプってあんな感じ?」



ノリノリの杏に、訪ねてみる。


そうならば是非応援したい。

杏が先輩と仲良くなってくれたら、私も先輩と話す機会が増えて、夢の真相がわかるかもしれない。



しかし意外にも、あっさり否定されてしまった。



「カッコイイけど、アタシ、遠恋中の彼氏いるからさー」



そう言って、杏は携帯の待ち受けを見せてくれた。


どこかの海で撮ったらしい写真には、掘りの深い、笑顔の似合う男の人と杏が笑顔で並んで写っていた。


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