「アタシさ、親友とダブルデートするのが好きなんだよね」

「……?」

「高校生になったらさ、親友と泊まりで海行ってダブルデートするのが夢だったの」



携帯を閉まった杏が、残念そうに言ったそんな言葉に私は首を傾げる。

そんな私を見て杏はため息を吐いた。



「かんな、彼氏いないって言ってたでしょ?」

「うん」

「で、朝倉先輩のことかなり気に入ってたじゃん?」

「まあ、うん」



確かに、昨日は杏の家で、かっこよくて優しい先輩について二人で語った。



「で、今日は朝からボケっとしてて、しかも朝倉先輩の話したら考え事はじめたから、先輩のこと気になってるかなって思ったんだよね」



なんて強引な!

私は思わず閉口する。


「めっちゃ協力する気だったのに!」と、少し頬をふくらます杏は可愛いが、色々こじつけ過ぎだ。


さっきまでの張り切りが、全部私の為だとわかると、なんだか笑えてしまう。



「あー!笑わないでよー!」

「ごめんごめん」

「もー。恥ずかしい。アタシ、つい自分のいいように解釈して突っ走っちゃうんだよね

絶対、先輩のこと気になってるって思ったのにな」



はあー、とため息を吐く杏。


そんな可愛い親友に、私は本当のことを話すことにした。


体育館の証明が落ちて暗くなる。



「ね、ちょっと着いてきて」


私は杏の手を引いて体育館を出たのだった。
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