「先輩、かっこ良かったねー」



林檎の香りの紅茶を飲みながら杏がいう。



「うん。しかも優しかったね」



同じ紅茶を飲みながら私は杏に同意した。


解散寸前に教室に辿りつき、無事に資料を受け取った帰り道。

私は杏の家にお邪魔していた。


可愛いオレンジ屋根の1LDKのアパートは、内装もオシャレだった。

つい先週引っ越してきたばかりだと、杏は言っていたが、綺麗に片付いている。


でも、家族で住むには狭い気がした。


それに杏の物ばかりで、寝室らしい隣の部屋がドアの向こうに見えるがベッドは1つしかない。



「杏ってさ、もしかして一人暮らし?」



気になって聞いてみる。

杏はきょとんとしたあと、「言ってなかったけ」と、とぼけた声で肯定した。



「実はさ、親父と喧嘩して、家出てきたんだよねー。家賃とかはママが払ってくれてんの」



頬杖をついてため息をつく杏。

家出して一人暮らしをはじめるくらいだから、相当な大喧嘩だったのだろう。


気になるが、杏は話したくないようなので、深く聞くのはやめることにする。


かわりに学校の事に話を戻した。


「そういえばさ、担任の先生、いい人で良かったよね」

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