┗遠い日の記憶

「おかあさーん!コレこっちでいい?」

「いいわよ。奥にしまっておいて!」



玄関を入ってすぐの、小さな和室に積まれた大量のダンボール。

夕飯を終えた母と私は、その仕分けに追われていた。


なんでも明日が、引っ越し屋さんからレンタルしていたケースの返却日らしい。


引っ越し屋さんは、ついでに、ゴミも引き取ってくれるらしく、その前に仕分けをと、母が言い出したのだ。


衣服、食器、本。


ダンボールは大量だが、業者に頼んで積めてもらったので、どの箱も整理されていて見やすかった。



食後のいい運動だ。

入学初日から素敵な出会いばかりで、気分が良かった私は、テキパキと作業を進めた。



「ふう。大体終わったわね」



母が、腰を叩きながら息をつく。


箱のラベルを見ると、残りは、父の物と押し入れにあったものだけらしい。


あまり物を持つのが好きじゃない父の荷物は、ほとんどが書斎の本で、他のものは少ない。

当の本人は引っ越してすぐに2週間の出張が決まり、家を出ているが、この量ならば、どうにかなりそうだ。



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