MOONLIGHT
12、羨望と嫉妬
ご飯が出来たと朝起こされた。
昨日遅かったので、あんまり食欲ないんだけど。
でも、将がせっかく作ってくれたんだから、要らないとは言えない。
将は、仕事で無理な時以外は、必ず正しい時間にきちんと食事をとる。
基本、家で料理したものだ。
それが、旨い上にバランスがいい。
役者は体力勝負で、不健康な生活は肌荒れするから気をつけているらしい。
大したプロ根性だ。
私とは正反対。
弁慶を伴い、リビングへ行くとテーブルには。
根野菜具だくさんの味噌汁、白いご飯、だし巻き、海苔、白菜と胡瓜と人参の浅漬け。
食欲がなかったはずなのに、それを見た途端、お腹がぐう、と鳴った。
「ぷ。」
将がほうじ茶を入れながら、肩を震わせた。
もう。
「だって、このメニュー見たらおいしそうで、脳が命令を出したの。」
屁理屈だけど。
「そうか、それはよかった。」
クスクス笑いながら、将が私にキスをした。
そして2人で向かい合って、手を合わせ箸を持つ。
何だろう。
凄く・・・ムズムズする。
ちらりと、ご飯を頬張る将を見ると。
ん?と優しい目で微笑む。
こういうのを。
・・・・・・・・・幸せって言うのかな。
「わんっっ!!(苛々)」
あ、勿論、弁慶の存在もだけど。
「はあ。ごめん、弁慶の餌忘れてた…。」
将がガックリとしながら、立ち上がり、キッチンへ行った。
私は、不機嫌な弁慶を膝の上に乗せた。
途端に弁慶の尻尾が振られ、咽がなる。
抱き上げで撫でくりまわすと、機嫌がなおったようだ。
ふ、可愛い。
やっぱり、もう、今の私には、弁慶と将のいる生活が幸せなんだ。
そんな事を考えながら、何気なくテレビをつけた。
将の職業を知ってから、気をつけてテレビを見るようになったのだ。
だけど。
テレビをつけて、びっくり。
どの放送局の画面にも、将が映っていた。
つまり・・・。
「あー、婚約会見やってるな。しばらく、俺、のろけちゃうかもなー。」
餌の入った皿を手に、将が嬉しそうに呟いた。