MOONLIGHT
完璧な将の朝食のせいか、寝不足なのに、元気な気分で病院についた。
結局昨日は、午前3時近くになって、帰宅した。
簡単にシャワーを浴びてサッサと寝ようと思ったのに、夜は肉食獸将の餌食となった。
まあ、そんなにしつこくはなかったけど…。
甘かった。
昨日のソノ事を思いだし、急に恥ずかしくなり誰も知らないのに、研究室に足を早めた。
途中、総合受付の前を通ると大型テレビがついていて、さっきまで一緒にいた将が映っていた。
昨日の婚約会見なんだけど。
てゆうか。
てゆうか。
てゆうか…。
何か、いつもごった返している総合受付が、水を打ったようにシン、としている。
人は沢山いるのに、皆将の会見にみいっている。
何の現象、なんだ?
しかも、画面の将のはにかんだ笑顔が可愛いじゃないか。
うぅ…なんか、恥ずかしくなってきた。
早く行こう。
と思ったら、コマーシャルに入った。
その瞬間、ため息ともつかないどよめきが起こった。
「うそー、瀬野将結婚するんだー。奥さん羨ましすぎるぅ。」
「瀬野将って、この近所にすんでるんだよね?私、犬の散歩で見たことがある。奥さん、お医者さんって聞いたけど、もしかしてこの病院の先生だったりして?」
「あー、カイチョー助けたって言ってたし。ありえるかも?」
ヤバい…。
私は、足早にその場を離れた。
何か、バレるのも時間の問題のような気がする。
てゆうか、何で戸田は全国的に『カイチョー』で認知されているんだ?
よくわからん。
ため息とともに、研究室のドアを解錠していると、後ろから呼ばれた。
「城田先生。」
振り向くと、いつか第3駐車場で質問と言った、3年の伴君。
満面の笑みだ。
身長は172センチの私と同じくらいだけど、少しぽっちゃりタイプで色が白い。
まあ、インドアガリ勉君タイプだ。
「伴君だったね、何か?質問?」
「はい、ちょっといいですか?」
少し躊躇ったが、まさか拒否するわけにもいかないので、ドアを開けたままにして、研究室に招き入れた。
意外にも、熱心な質問で斜めに聞くわけにもいかず、襟を正し、しっかりと教授した。
こういう時に思う。
確かにこの大学は、偏差値はあまり高くないけれど、皆医者をめざしているだけあって、志を感じる事が多い。