MOONLIGHT
…ホント、びっくりだ。
「私の方こそ、神田先輩は凄い人だってずっと思ってるんですけど?それに、私が柔軟な、っていいますけど、神田先輩だって凄くやわらかいじゃないですか。」
びっくりして、目を見開いたまま言葉を続けた。
が。
神田先輩が眉をしかめた。
「お前、その言い方ヤメロ。アッチのほうと勘違いされるだろ。俺はやわらかくねー。いざっつう時は、カッチカチだ。」
そう言いながら、自分の下半身に目をやる。
「ドン引き。」
私の冷めた視線に、お前から言い出したんだろ、って、やめて欲しい。
決して私からじゃないし。
「まあ、あれだ。」
ごほん、と咳払いして下ネタから話を修正した。
「何です?」
「だから、そういう女々しい考えで、俺はT大を辞めたんだ。だけどな、やっぱ、後悔した。」
「え?」
「惚れた腫れた、以前にお前と仕事していて楽しかったんだよ。お前とは、気が合うっていうか、医学で目指すところの自分の理想とか、大切にしたいものがにてるだろ?」
まあ、確かに。
「私達、大畑チルドレンですからねー。」
そういうと、先輩はクスリ、と笑った。
「まあな。で、ここに来てから、大学のこと親父からまかされて、それなりにやりがいとかあるんだが、思うようになかなかいかない。」
「そりゃ、そううまくは行きませんよね。」
「で、そんな時にお前だったらどうするんだろう、ってよく考えた。」
「はあ。」
「結局、戸田のおっさんのことで、お前がやってきてラッキー、と思ってな。そのままここへ引きずり込んだ訳だ。」
「…そうですよね、よく考えたら、神田先輩だってもとは循環器内科専門だったんだし、心筋梗塞の処置できましたよね。」
私がそう言ってため息をつくと、相変わらずどっか抜けてるよな、って笑われた。