MOONLIGHT



はあ。

まあ、だけど。


「私、ここに勤めてよかったと思いますよ?首にならない限り、辞める気はありませんよ。」


そう言うと、ンなことはわかってる、医局長がいいからな、と根拠のない自信満々発言をされた。


「まあ、あれだ。こんな無様な話をしたのは、お前も一度無様になってみろ、ってことだ。」


ご飯を食べ終わり、ご飯を食べるんで一度消したシケモクを再びくわえる神田先輩。


「・・・無様?」

「ああ、失って初めて大切だったことに気がつく無様なこと、お前だってあるじゃないか。」

「……。」

「T大の研究室に週2通って、例の研究を再開するって話が、梶教授からきてるんだ。所属はあくまでもうちの大学だがな。NYに行って、よく考えてみろ。」


ハムカツ定食を食べおえた私は、神田先輩同様シケモクをくわえた。


シケモクが震える。


ハムカツ定食なんて、ケチなことするけど。


こんなことで、ぐっとさせるんだから。


ドケチ神田のくせに。



私は、よく考えてみますと言うのが精一杯だった。





シケモクを根元まで吸い終わる頃には、気持ちは落ち着いていた。


新しいタバコに火をつける。


そんな時、店にいた何人かの学生がやってきた。


「城田先生、ですよね?」

「そうだけど?」


そう答えると、ガタイのいい学生が俺ファンなんですっ、って言い出した。


え、と驚いていたら。

何故か、俺も俺もと言い出された。

私は、どうリアクションをとっていいか分からず固まってしまった。



だけど、突然。

目の前の非常識な男がとんでもない事を言いだした。


「お前らにはこいつ無理だぞー。あの天下の抱かれたい男、瀬野将と結婚するからよ。週刊誌に乗ってたちゅー、写真こいつ・・・きゃー、城田先生のスケベッ!」

「な、な、何を・・・っ、神田先輩っ!!」


このアホは何をいいだすんだ?

私はおもいっきり、神田先輩を睨んだけど。


「瀬野将となんて、うらやましいなー。」


って、棒読みで言われた。







で。


その日のうちに大学中に、私が将の相手だと知れわたったのは、言うまでもない・・・。


男の、嫉妬と羨望って、怖い…。




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