MOONLIGHT



帰るはずだったのに。

何故、グランドヒロセ銀座にいるんだろう。

もっと言うと。

ベッドに押し倒され、私の上には将が馬乗りになっている。


「将、弁慶は…。」

「今日、終わる時間読めなかったから、ホテルに預けてきた。っていうか、余裕だな。この状況で他のこと考えられるなんて?俺なんか、頭の中、レイだらけで何も余裕なんてないのに。ムカツク!」


いや、余裕って…弁慶のことだし。

当然の心配だと思うけど。

ちょっと、反論しようと口を開きかけたけれど。

濃厚なキスで塞がれた。







「はぁっ…将、激しい…。」


将の攻め立てる動きに、私は根を上げる。

手術後だし、かなり体力的には辛い。

だけど。

眉を寄せた切ない声で、将が私を呼ぶから。


「レイ…。俺だけを見ろよ。俺だけのレイだろ?」


不安なのだろうか。

こんなに好きなのに。

だけど、ふとオサムの言葉が思い出された。

もっと甘えて欲しかった――

そうだ。

思っていても、言葉に出さないと。

好きな人を不安にさせていたら、いけない。


「今、キスしたいって、こうやって抱きあいたいって思うのは、将だけにだよ。あと、甘えたいって思うのも。ねぇ、キス…もっと欲しい。」


私は素直に思いを伝え、自分から唇をよせた。



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