MOONLIGHT
「え、そうかなー。知りたいことあったから、聞けるかなーって思って。だけど、マジな話してたし。だから、さっきの神田先生だっけ?がいなくなるまで待ってたんだけど…そしたら、いいものが聞けた。結構、雰囲気があって、うまかったね、城田さんの『ムーンライト』。気だるい感じがよかった。」
ニコニコと笑う瀬野。
「そりゃぁ、どうも。貴方も、上手だった。びっくりするくらい。プロ並みだね?」
って、本気で褒めたのに。
何故か。
「ぶっ!!…くくっ、あははははは……。」
大爆笑された。
褒めたのに。
すっごい、ムカついた!!
立ちあがり、私はおもむろに歩きだした。
そして、振り返りもせず。
「お茶、ごちそうさま!!」
そう言ったのだけど。
その瞬間、腕を掴まれた。
ふわりと、セクシーな勘違い男の香りが鼻をくすぐった。
「待って。聞きたいこと聞いていないから。教えて?」
腕を掴まれて、何故かドキリ、とした。
患者さんなら、なんとも思わないのに。
「何?」
だから、ぶっきらぼうな答えなのか。
「城田…何て言うの?名前、教えて。」
「城田レイ。」
早く腕を離して欲しくて、直ぐに答えた。
用事は済んだだろうと言わんばかりに、私は腕を外す。
そして、前を向いて歩きだした。
「またね、レイ。」
名前を呼び捨てにされたことと、私の名前だけが知られたことが不快で、思わず振り向いた。
「貴方は?」
「え?」
「貴方の、名前よ。瀬野…何ていうの?」
せっかく、聞いてやったのに。
何故か、また爆笑された。
そして、息も絶え絶えに。
「せ、瀬野っ…将。瀬野将、だよ…くくっ…あははは。」
ふんっ。
失礼な、やつ!!