MOONLIGHT
「将、帰ろうか?」
確かに、事務長のことは心配だけれど。
もう、私にはどうすることもできない。
将の手をとった。
「悪かったな、レイ。だけど、お袋が倒れた時に、レイが近くにいて助かった。ありがとう。」
こんな、謙虚なことを言う男じゃなかったのに。
苦労しているんだろう。
そのうえ、母親がこんな状態じゃ、大変だろう。
「オサム。頑張れ…私の母も、前…事務長と同じで此処に通ってたんだ。まぁ、症状はちがったけど。」
つい、誰にもいわなかった事を言ってしまった。
だけど、それでオサムが自分だけじゃないって思って頑張れるなら、それでいい。
私にできるのは此処まで。
それ以上は、何ももうできないんだ。
それが現実だ――
私も、オサムも。
前に進んでいたと思っていたけれど。
今一度、現実を見つめる事になった……。