MOONLIGHT
15、心が見たい
銀座の総合病院を2人で出た後。
結構いい時間で、そのまま弁慶の待つマンションへと帰った。
将の手料理を食べて、片付けをしている間、寒さも考えず、弁慶とベランダへ出る。
タバコを燻らせながら、珍しくお母さんのことを思い出す。
お母さんは私が中学生の頃から3年程。
ガンを患った。
私は治ると思っていたが、お母さんは悲観していた。
私がお父さんの籍にはいっていなかったからかもしれない。
最初のきっかけは、お母さんの涙がとまらなくなったこと。
今ならわかる。
あの、溢れる悲しい涙は。
強い不安の表れだったのだろう。
「レイ…何を考えてる?あいつのことか?」
ダウン姿で現れた将は、不機嫌な顔だ。
私はクスリ、と笑って首を振った。
「違うよ…お母さんのこと…久しぶりに病院にいったから、思い出したの。」
ざっと、お母さんの話をした。
「そっか…。それで、レイは落ち込んでるんだな。」
「え?」
私は思ってもいなかった将の言葉に顔を上げた。
「本当に、レイって、ヒーローだな。弱い者の味方で。もし、俺の事が好きな女が横恋慕してきても、ソイツが病気になったら必死で助けるんだろうな。」
将はそう言うと、1人で納得して頷いている。
「例えがよくわからないし。しかも自分がモテる設定って、自意識過剰すぎない?」
「…あのな、俺を誰だと思ってんだ。『殿堂入りの抱かれたい男』だぞ?」
「…結局、初恋の相手には、そう思われなかったんだから、プライベートでは意味ないと思うけど。」
素直な感想を述べてみた。
「ぶっ。あははは…やっぱり、レイだ!俺が好きなレイだ。まわりに囚われないで、自分で判断するそういうところが好きだ。」
え、悪口言っていたのに、告白?
「…で、私が何で落ち込んでるんでるなんて思ったの?」
話を強引に戻した。
将はんー、と少し考えてから口を開いた。
「レイさ、少しあのオバサンとレイのお母さんをダブらせてないか?タイプは違うけど。それと、やっぱり好きだったやつには、幸せになって欲しいって思ってるだろ?」
何でわかるんだろう。
だけど。
「あー、俺に悪いなんて思わなくていいぞ。俺だって、夕真ちゃんには幸せになって欲しい…タケさんが亡くなった時、本当に悲惨だったから。」
そういって、将は眉をしかめた。
「いいの?別れたのに、まだ関わりをもつなんて。」
私がそういうと、将は私をぐい、と引き寄せ抱きしめた。
暖かい。
落ち着く。
やっぱり、ここが私の場所だ。
「…なあ、今。レイはこうやってて、どう思う?」
頭の上から聞こえるハスキーボイス。
私の心を癒す声。
「心地よくて、ここが私の居場所だって思う。」
素直に思っていること。
将がクスリ、と笑った。
「ふ…合格。」
「え?」
「俺の嫁さん合格。それが俺の求めていることだから。忘れんなよ?」
「ええっ!?」
「あと…いつもこうやって、心を見せてくれよ。」