MOONLIGHT



「なっ、なっ、何を言ってるの…将。そんないいもんじゃないよ、私。」


自慢大会か?

焦って、弁慶の頭に顔を埋める。


「それに、照れ屋さんだし。」


血迷った事を言って、将が私の頭にキスをする。

や、やめてくれーーーーーーー。



もう、帰ろうかな…。


恥ずかしさで自爆できる気がしてきた私は、本気でそう思ったのだけれど。




「うん。レイちゃんは、本当にヒーローだね。レイちゃん、本当にありがとうね?」


夕真さんが少し涙目で私を見つめた。


「え?」


お礼なんて言われることあったっけ?

私が首をかしげていると。


「ほ、ほ、ほ、本当にっ、ありがとうございましたっ、たっ…。」


志摩さんの後ろから、この間の50代の柔らかな男性が私に頭を下げてきた。


「彼は内弟子で熊谷さん…熊ちゃんっていうんだけど、志摩ちゃんの恋人なんだ。家で一緒に暮らしてる。」


青山さんが柔らかい表情で、私に説明してくれた。


ああ、そうか。

志摩さんを見た。

少しはにかんだ顔をしている。


「レイさん、私妊娠3カ月でした。あのままだったら、切迫流産になっていたかもっていわれました。あの時、強く真剣に話をしてくれて、ありがとうございました。」


それはそれは幸せそうな顔と、言葉で。

堪らなく嬉しくなった。


よかった、と一言答えて、胸が詰まったのでまた弁慶の頭に顔を埋めた。


そんな私をクスクス笑いながら、将が抱き寄せた。

皆に、俺のお嫁さん一見クールで格好いいけど、スゲー可愛いでしょ?と自慢するのを将の胸に弁慶と隠れながら、きいていた・・・。









ずっと、心を凍らせて、人に心を見せなかった私だけど。


私の心が見たいといった将。

私の心に気づいてくれる将。

私の心ごと抱きしめてくれる将。


私も、これから。

あなたのそばでずっと。


あなたの心が見たい。


幸せになろうね―――








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