MOONLIGHT
「とりあえず、乾杯?」
私は、咥えタバコで出されたビールグラスを持ち上げて見せた。
「何に、だよ?」
そう言いながらも、芝崎さんもグラスを持った。
「そうね…まー、タイムリーな話題として『将のアホに』かな?」
私がそう言うと、芝崎さんはゲラゲラ笑った。
「相当頭にきてんな、いいぞ。じゃあ、乾杯。」
ということで、『将のアホに』乾杯をした。
「だけど、城田先生って、クールだよな。かなり変わってるし。女では珍しいタイプ。」
乾杯した後、ビールを一気飲みし、2杯目のグラスに口をつけたら、そんなことを言われた。
私は芝崎さんに体ごと向き直った。
「まず、私のこと先生呼ばわりしなくていい。あなたは私の生徒でも患者でもないから。それから、『クールと変わってる』はあなたが勝手に私に抱いた感想だからあえて何も言う気はない。だけど、『女では珍しいタイプ』っていうのはどういう行動でそう思ったのか、ちょっと興味がある。まあ、あなたのそばにいる女とは違うタイプだからかもしれないけど。」
3本目のタバコを咥えて、芝崎さんをじっと見た。
芝崎さんは、頭をかいた。
「城田先生がダメなら、レイさんでいいか?」
ため息をつきながら私を見つめた。
何となく―――
何となくだけれど、コイツとは仲良くなれると、そう思った。
だから。
「・・・いいけど。芝崎、怪しいフェロモンだしすぎ。」
私がそう言うと、芝崎って呼び捨てかよー、って吹き出した。
そう呼ぶのが、何となく・・・しっくりくるような気がしたのだ。
でも、フェロモンは認めるんだ。
そこへ丁度、ピザとサラダが来たので、勝手にピザを頬張る。
あ、結構美味しい。
ひとしきり笑ったあと、芝崎は口を開いた。
「いや、さ……経緯がよくわかんねーけど。普通女だったら、オッサンにあんなこと言われて、ムカついて言いかえさねーか?一応、将さんと結婚するんだろ?女のメンツとか…どう考えても、あのオッサンレイさんにひでーだろ?」
あー、水沢さんとこの事務所の社長のことか。
木村さんとしゃべってたら、話があるって言いだした、スーツの人か。
まあ、理不尽かとは思ったけど。