MOONLIGHT
「仕事終わったの?もう、夕真さんの家?」
将からの電話だった。
私が1人で鎌倉に戻った日から、今まで以上に頻繁に電話がかかってくるようになった。
授業中や、診療中など出られない時はそのままスルーだが、用もないのにかけてくるから時間が結構とられる。
国井さんが、瀬野さんですかっ!?って横で興奮しているし。
『うん。夕真ちゃんちにもどって、今シャワー浴びたところ……レイ、今家じゃないよね?どこ?誰と一緒?』
途中から、急に将の声が低くなった。
もう。
「あー、今大学の近くの居酒屋。私の研究室手伝ってくれてる学生と。」
『いつから飲んでるんだ?』
「え?20分くらい前かな…わりと遅めに研究室出たし…何で?」
何か、段々将のご機嫌が悪くなってる気がする。
何で?
『…じゃあ、そこにまだ当分いるな?』
「と、思うけど。」
『場所どこ?何て名前の店?』
どうやら、来るらしい。
芝居中だからダメだと言ってもきかない。
挙句の果てに、もう別々に寝るのは限界だ、と言われた。
って、2日じゃん。
離れてるの…。
はあ、私これから海外の出張増えそうなんだけど…こんなことで大丈夫だろうか…。
がっくりとして、電話を切ると。
皆がどうしたんですか?と聞いてきた。
「ねえ。この店、料理テイクアウトできる?」
私はため息をついて、質問をした。
まさか将をここへ来させるわけにはいかないし。
何て言ったって芝居中で怪我やトラブルがあるといけないし。
将が来るから、私は場所を変えていいかと皆にきいた。
すると、いきなり4人のテンションが上がった。
特に国井さんはすごかった。
なだめるのに疲れた。
で、テイクアウトの料理を待って。
向かった先は――
「レイちゃん、遊びにきてくれたんだー。」
うちからも近い、戸田んち。
まさか、いきなりうちに連れて行くわけにもいかないし。
訳を話し、面倒だから戸田から将に連絡を入れてもらった。
「いやー、将君スゲーやきもちやいて、ウケるしー。今の電話だって、なんで俺からなんだって拗ねてるし。ホント、レイちゃんにメロメロだよなー。」
こうやって突然でも遊びに来たことが嬉しいのか、戸田は凄い上機嫌だ。