MOONLIGHT



学生たちは、街の権力者であり、大学病院の理事でもある戸田に少しビビり気味だ。


無駄な気遣いをさせてはかわいそうなので、単なるスケベジジイだから、気を遣うなといっておいた。



「レイちゃん、相変わらず酷いなー。」


戸田はM体質なのか、最近まったく気を遣わずに毒を吐く私に対して、嬉しそうな顔をする。

まったく、わからないオヤジだ。

ふと見ると、私たちが通されたいつもの統一感のないリビングには、次々と料理が運ばれ、宴会の用意がなされていた。

私たちだけにしては、数が凄く多いんだけど。

私が、不思議に思っていると。


「いやー、将君のやきもちを夕真ちゃん達が面白がって、芝崎の車で皆でこっちむかってるんだよねー。」


と、ありえないことを言いだした。








玄関が急に騒がしくなった。


「おー、御一行様の到着だなー。」


戸田が上機嫌で、腰を上げてリビングのドアをあけると。


何かが凄い速さで、部屋に入ってきた。

そして。


ビュンッ―――


という勢いで、私の膝に飛びのってきたのは。


「弁慶!」


鼻を鳴らし、尻尾をとれるんじゃないかというくらいブンブン振っている。

よほど寂しかったのか、鼻を鳴らすのが止まらない。


「よし、よし。私も会えなくて寂しかったよ。」


ギュウ、と抱きしめキスをした。

弁慶は私にベタリと張り付いて、撫でて欲しそうな顔で私を見上げた。


はあぁー、可愛い。


堪らなくなって、弁慶を撫でくりまわすと、喉をならし嬉しそうな顔をする。


ふふ。


「レイちゃーん、自分がレイちゃんにやって欲しいこと、全部弁慶に先を越されて拗ねてる人がここにいまーす!どうにかしてくださーい!」


夕真さんがからかうように、声をかけてきた。

学生4人は、将ばかりか夕真さんの登場に口も聞けない様子だった。


チラリと将を見ると。


ありゃ。

完全に拗ねてる。


ぷ。


面白いから、もうちょっと弁慶を撫ででおこう。


ワシャワシャと弁慶をなでくりまわしていると、弁慶はご機嫌で喉をならしながら私にキスをしてきた。


んー、可愛い。


と思ったら。



「もう、限界。」


ヒョイ、と後ろから抱き上げられて私が座っていた場所に将が座り、私を膝の上に座らせた。

そして私を後ろから抱き込む。

将は、私の首に顔を埋め両腕はがっちり私の体をホールドしている。


身動きがとれなくなって、苦しい。






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