MOONLIGHT



「ちょっと、将?」


体を離そうとするが、将は身動きもしない。


「ヴゥーー(怒)!!」


将のせいでいきなり私の膝から落とされた弁慶が、将に文句を言った。


「弁慶、煩い!何だよ、お前ばっかり!」


ペットに本気でキレる、『殿堂入り抱かれたい男』って、どうなんだろう…。

ほら、学生たちドン引きして固まってるし。

夕真さん達は、大ウケで爆笑してるし。

あれ、夕真さん、青山さん、芝崎のほか、前に見た滑舌のやたらいい関西弁のオッサンもいる。

あの時以来だけど、夕真さん達はもちろん、将や戸田とも仲良さげだな。

誰だろう?

すると、国井さんが叫んだ。


「ええー!?ム、ムッシュー!?」


あ、有名な人なのか。

見た目は日本人だけど、そうか。


「あ、フランスの人だったんだ。ボンソワール。」


ようやくでた答えに私は満足したんだけど。


「「「「「「「「「「…………。」」」」」」」」」」


何故か、皆固まって、黙り込んだ。


え、私結構、フランス語得意なんだけど???


と。

思ったら。


「「「「「「「「「「ぶぶっー。」」」」」」」」」


何故か皆、一斉に吹き出し、大爆笑となった。


拗ねて、私の首に顔を埋めていた将でさえ。

私の首元で、震えだした。


って、そんなとこで震えたり、小さく吐息を吐いたりしたら。


マズいし。

非常に。



「将?」

「ん?」

「ちょ、離れて。」

「やだ。」

「離れて。」

「何で?」


こいつ、わかってるくせに、わざとやってる。


「仕返しか?」

「さあ?レイは自分が仕返しされるような事を俺にしたんだ?」


くそう、仕返しだな。

きつく睨む。

だけど、急に将が切ない目をした。


「やっと、俺の目をみてくれた。2日ぶりだ。」


そう言って、ちゅ、と私の唇にキスをした。





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