MOONLIGHT
「!!!」
な、何すんだ、皆の前で、教え子の前で!!
「「キャー!」」
何故か、夕真さんと国井さんがテンション高く叫んだ。
「はいはい、将くーん。イチャイチャするのはあとでねー。おじさんヤモメだしー、大好きなレイちゃんにキスしてるのみると、ハートブレイクだから、ないちゃうよー。」
泣き真似をする戸田。
「キモい、戸田。」
いつの間にか敬称さえもなくなってしまったが、さん付けより嬉しいとM発言をされ、以来プライベートでは戸田とよんでいる。
「えー。キモくないよー。レイちゃんへの愛は純愛だしー。」
「はい、はい。」
将とのキスを忘れてもらおうと、必死で戸田と喋る。
だけど、空気が読めない人がいたんだ。
「やっぱりー、ドラマのキスシーンと、レイちゃんにするキスと全然違うねー、将くーん。」
ゆ、夕真さん…。
私が焦って夕真さんを見たが、気にもしない様子で。
その上、井上さんが。
「そうですよねー。今みたいなバードキスなら、『君の隣に僕はいる』の太一役の時の噴水の前でアミちゃんにしたキスと種類は同じでしたけど、空気感ていうか、表情が全くちがいましたねー。あの噴水のキスシーンで私ドキドキしたのにー。」
な、何なんだ?
その後、延々と夕真さんと国井さんは将のドラマ話で盛り上がった。
10時を過ぎたので、お開きにしようと言うと、夕真さんは今日は戸田の家に泊まるのでまだ飲むと言い張る。
学生4人も、戸田が泊まって行けと勧め、4人も泊まることに。
私達は、将の明日の舞台のことを考えて帰ることにした。
「将君だけ帰ればー?」
という戸田の冗談にも耳をかさず、将は帰り支度をする。
学生達に泊まって大丈夫かと聞くと、皆地方出身で1人暮らしだと言う。
何かあったら電話しろと言って、明日は10時に研究室集合にした。
国井さんは勇気を振り絞って、将にサインを貰っていた。
「夢みたいですー。ありがとうございますっ!!」
国井さんはテンションあがりっぱなしだ。
「いやいや、こちらこそいつも応援してくれて、ありがとう。それから、レイの研究室の方も手伝ってくれてるんだって?これからも、よろしく頼むね?レイは一見クールにみえるけど、このとおりどこか抜けてるから、いつも心配なんだ、特に、男に対して警戒心がないから、心配でね。どうかな、大学ではレイのこと狙ってるやつとかいる?T大の方も心配なんだけど…あっ、大学だけじゃないよね、病院の方が患者とか…レイ、セクハラとかないか?やっぱり、ガードしてもらう人雇うか?だったら、俺…「将、話長すぎ。」
あまりにもくだらないことばかり言うので、途中でピシャリ、と話を止めてやった。
夕真さん達がゲラゲラ笑う。
「う、そ…無口で大人キャラの、瀬野さんが…。」
あ、実際の将がイメージと違うから、国井さんがショックを受けた。
「国井ちゃん、真の姿ってのはこんなもんだ。あの無口キャラは完全に事務所のイメージだからなー。実際はこのとおり、レイちゃんに骨抜きで、話なげーし。レイちゃんに邪険にされりゃぁ拗ねまくるお子ちゃまキャラだしなー。あ、これは内緒だぞ?」
戸田、敢えてばらさなくても。
てゆうか、いつの間に「国井ちゃん」呼ばわりしてんだ?
まったく、このスケベジジイッ!
皆に帰る挨拶をして、リビングを出た。
相変わらず、弁慶を左手に抱き、右手は私と手をつなぐ将。
繋いでいる手から、好きという気持ちが伝わってくる。
私の気持ちも伝わるといいな…なんて不意に思って、恥ずかしくなった。
「トイレいってくる。」
少し頭を冷やそう。