MOONLIGHT


将の舞台は、素晴らしかった。

10年前に見た舞台も素晴らしかったけれど。


将の演じた、ジョゼフという歌とダンスが好きな、洒落者の伯爵はとても魅力的だった。

恋多き男で、花売りの娘アンナに一目ぼれをしてしまう。

そのアンナが水沢だ。

水沢も上手かった。

可憐な娘役がよく合っていた。


ラストの将の『ムーンライト』の歌とダンスシーンは素晴らしく、見る者を圧倒した。


スタンディングオベーション、拍手喝采の嵐。



出演者が何度も、舞台上に再登場しても、鳴りやまない。

いつまでもさめない興奮を客が、もっともっとと拍手で要求する。


その時。

将が、マイクを持ち、1人舞台に登場した。

より大きくなった歓声と拍手。

だが、将が舞台の中心にたち、深く一礼をすると、場内は水をうったように静まり返った。

舞台上の将の存在は。

いや、スポットライトを浴びた将は。

見る者を圧倒するほどの存在感で。

そして、誰をも魅了するオーラを放っていた。


将がマイクを口元に持っていった。


「皆様、本日はありがとうございました。沢山のご声援と拍手を頂きまして、心より感謝申し上げます。全日満員御礼の中、本日で無事千秋楽を迎えましたこと大変嬉しく感無量でございます。これも、皆様のお陰と出演者一同、衷心より深謝申し上げます。」


そこまで話すと、また将は深く長く、心をこめて最敬礼をした。

そして、顔を上げると。


あれ、さっきまでの将と何となく表情が違う?

そんなことを思ったら、壇上の将と目があった。

げ。

なんか、こういうシュチュエーション、照れる。

あたふたと、俯く私。

だけど、その瞬間。

信じられないことに、私の周りが明るくなった。


え?


てゆうか。

私にスポットライトが、当たってる?

ええっ!?









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