MOONLIGHT
将が再び口を開いた。
「さて…。先日私事ではありますが、婚約発表を致しました。元旦に式を挙げ、入籍をするわけですが。今日は、彼女が見に来てくれていまして、実は大変緊張致しました。でも、とても嬉しくてですね…そこで、公私混同で申し訳ないのですが、アンコールといたしまして、彼女に『ムーンライト』をささげたいと思います。彼女のために歌うのは、2度目でして。1度目は初めてであった日…思い出の曲です。申し訳ありません、完全にプライベートな感じですが…今日はクリスマスということで、勘弁して下さい。では、レイ…君に捧げます。」
・・・勘弁して下さい。
こういうパターン一番苦手なんですけど。
だけど、拍手やおめでとーという歓声、口笛、が湧きおこった。
私の周りの人も、私に向かってお祝いの言葉をむけてくれた。
そして、ピアノ奏者だけが登場した。
劇中、生演奏での歌や踊りがあったので楽器はそのまま舞台上に設置されていた。
そして、一瞬舞台上は暗くなり。
ピアノだけの演奏が始まった。
スポットライトが、将と私に当たる。
まるで、2人だけの世界のように。
『ムーンライト
麗しい月
ムーンライト
僕は君を思う
ムーンライト
僕を照らして
ムーンライト
僕の人生には君が必要だ
ムーンライト
君が好きだ
ムーンライト
君が欲しい
ムーンライト
君は僕の物
ムーンライト
君と幸せになりたい』
甘い歌が終わると、激しいタップダンス…。
てゆうか、ずっと将は私をガン見状態なんだけど。
ちょっと、感動なんだけど。
でもやっぱり、こういうのは、マジ恥ずかしい…。
ど、どうしよう。
ちょっと、バツゲーム的な気持になってきたんだけど。
隣に座ってる夕真さんは、さっきから涙を流して感動しているみたいだけど。
私は、どうやったって泣けない。
むしろ―――
うーん。
「レイさん。どうした?」
夕真さんの反対隣に座る芝崎が私のそわそわに気がついて小さな声をかけてきた。
私も、小さな声で答える。
「将には申し訳ないんだけど、お手洗い行ったらダメかな?何か、バツゲーム並みに恥ずかしいんだけど。」
「ぶっー!」
芝崎が吹き出した。
…ゴメン、将。
睨んでるね。
だけど、貴方が好きよ。