MOONLIGHT
「レイちゃん、待って!」
「ゆま?何で止めるの?」
「何でって、将君が初めて皆に紹介したいって、思った子だよ?」
「瀬野君は、騙されてる!離婚したばかりなのに、瀬野君のうちに転がり込んで。今日は、わざわざ目にとまるようにベリーBの服着てきて、他の男の影をちらつかせて・・・妊娠中のゆまにタバコの煙をすわせて!」
何だか、一人で盛り上がってるけど。
結局、奥さんにタバコの煙を吸わせたのが、気に入らなかったのね。
「夕真さんの妊娠しらなかったの。ごめんなさい。大事にしてね?」
私は頭を下げると、今度こそ、歩きだした。
「待って!今、将くん呼ぶから!」
夕真さんの言葉に首をふる。
「もう、煩わしいことはいいです。…ごめんなさい、夜勤明けで、この2日で2時間しか寝ていないから、言い方も雑ですね。青山さんのおっしゃるとおりです。瀬野将の家に転がりこむなんてどうかしていました。鎌倉中の不動産屋に当たってどこも部屋をかしてくれなくて、困っていたので、って言っても言い訳になりますけど。部屋はどうにかしますから、ご心配おかけしました。」
そう言って、庭から廊下へあがる。
夕真さんが何か言っているけれど、振り返らない。
歩きだすと、廊下を曲がってきた男の人とぶつかりそうになった。
「えっ!?レイ?」
「え、典幸。」
目の前にいたのは、葉山典幸。
世界的に有名なクリスタル硝子の会社の社長だ。
「ええっ!?葉山さん知り合い?」
夕真さんが驚いている。
「ええ、レイは俺の―――「ただの、幼馴染みです。」
私が典幸の言葉をさえぎってそう言うと、典幸は悲しそうな顔をした。
「へぇ、そうだったんだ。世間は狭いね?・・・でも、遅かったね?まあ、今日急に召集かけたから、用事がもしかしてあった?」
わかってしまった。
典幸のドタキャンの理由。
そりゃあ、大好きな夕真さんのお誘いにはかなわないよね。
だけど、今日は、話があったのに。
まあ、いいか。
人を頼る気持ちになるから、こうなるんだ。
瀬野将にも、典幸にも、もう頼らない。
誰にも、頼らない!
なのに―――