MOONLIGHT



「あー、気持ちだけありがたく受け取っておきます。」


遠回しに、でもきっぱりと断った。


「何で、甘えないかなー、城田は。ここは、甘えどころだろ?」

「甘えベタなんです。それに、久しぶりに人を頼ったら、痛い目に会っちゃって…ぶっちゃけ、もう…傷つきたくないんですよね。」


って、言いながら、神田先輩にも甘えている。

昔から、神田先輩には、こうやってちょこちょこ本音をこぼしていた。


「何だよ、また俺は愚痴担当で終わるのか?愚痴聞くだけじゃつまんねーんだよ。昔だって、中川の浮気疑惑をグチグチ俺に話してきやがって。だから止めとけ、って言ったんだよ。結局、浮気されてんじゃねーか。大体なーよく、告白されて思いっきりフッた偉大な先輩に、彼氏の浮気相談なんてできるよなー?その神経がしんじられねーよ。」


文句を言いながら、まだ蓋を舐めている先輩。

そっちの方が信じられないけど?


「今の苦情、『偉大な先輩』ってとこ以外なら納得ですけどー。」


私は、アイスをもう半分食べていた。


「何だ?城田、お前俺を『偉大な先輩』じゃなかったら、何だとおもってるんだ?」

「………正直な気持聞きたいですか?」

「…ああ。」

「『どケチ先輩』?だって、コンビニでも、たまには、上の棚に入った高級アイスが食べたい!!」


言ってやった。

ビシッと。


神田先輩の口から、アイスのふたがポロリと落ちたけれど。



後悔はない!!




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