MOONLIGHT
何だか、イイ感じで毎日が過ぎて行った。
ある日の夜勤明け、帰ろうとしていたら瀬野将から電話が入った。
「はい。」
『レイ?』
「うん。どうした?」
『悪い、昨日から仕事がおして…いや、長引いてて…今日も帰れそうにないんだけど、弁慶をホテルに預けてるんだ。レイは夜勤明けだろ?明日休み?』
「うん、明日は一日休みだから、今から弁慶迎えにいこうか?どこのホテル?」
『あー、助かる。じゃあ、店の名前と住所と電話番号をメールするから。店にも電話しておくよ。悪いな?疲れてるのに。』
すまなそうな、ホッとした瀬野将の声。
「何言ってんの。弁慶のことなら、最優先だし。それに、弁慶と一緒に寝ると、安心してよく眠れるし。弁慶がいないとダメなのは、私の方だし。」
それは本心だったけれど・・・それよりも瀬野将の気持ちを軽くしようとして言ったのに、何故か瀬野将は電話の向こうでムッっとしたようだ。
「……弁慶だけか?それ、俺にも当てはまらないか?」
何?
急に、激甘ムード!?
「あ、あ……。」
「答えて!!」
「……瀬野将にも…………当てはまります。」
キャーーーーーー。
穴があったら入りたい。
「はぁ。何か、元気出た。」
「え?元気なかったの?」
「うん、10時間労働で、疲れきってる…。これから、どこまで続くか先が見えない。早く、レイと弁慶がぐーすか腹出して、呑気に寝てる家に帰りたい。」
何、それ。
「呑気は認めるけど、腹は出してない!!私も弁慶もレディだし!!」
そう反論すると、何故か瀬野将は電話の向こうでゲラゲラ笑いだした。
「くくっ…認めるんだ、呑気なのは……くくっ……あははは……。」
ウケてるけど、変なテンションだな。
「何か、変だね?」
「わかる?完徹なんだけど。」
わかる、完徹の変なテンションは、よく夜勤のときに陥るから。
「…大変なんだね、ヤクザも。」
「はっ!?」
「あ……もしかして、私に内緒にしたかった?でも、大丈夫だよ。瀬野将がヤクザでも、私好きだから。心配しないで、そんなことで嫌いにならないよ?」
安心させようと、真剣に言葉にしたのに。
何故か、電話の向こうで爆笑してる?
「はぁ…はぁ…な、何で俺がヤクザって気づいたの?…ぶッ…。」
息も絶え絶えで質問するな。