MOONLIGHT
休み明け。
弁慶に癒され。
疲れ切った、瀬野将の寝顔に少しときめいて、気分よく出勤したのに。
気が重くなる電話がきた――
数十分話をした後、受話器を置いて、ため息をつく。
今さら、どの面下げて…というのが、正直な気持ちだ。
はあ。
「梶教授か?」
いつからそこにいたのか、気配を消していたのか、気がつかなかった私は飛び上がった。
「神田先輩…驚かせないで下さいよ。」
ドキドキした胸を押さえながら、言葉を発した。
「おー、その仕草、セクスィーだなー。」
「セクハラ、パワハラで訴えてやる!」
「大丈夫だ、うちの理事はパワハラのオンパレードだ。うまく握りつぶしてくれる。」
その言葉に、戸田の顔が浮かぶ。
全くその通りで、がっくりと項垂れた。
ゲラゲラと、神田先輩が笑う。
「…梶教授から、俺にも電話がかかってきたぞ。お前にもプライドはあるだろうが、何が大切か、よく考えてみろ。まあ、でも安心しろ。お前には大畑先生と偉大な神田先輩がついているからなー?」
ポン、と肩を叩かれた。
それと一緒に。
ぶうぅーー
おならをされた。
ここは、私の研究室。
「ちょっと、やだ!何してくれてるんですかっ!?くさーい!!」
手元にあった書類で、パタパタ仰ぐ。
「大袈裟なやつだなー、この部屋スゲータバコくせーから、丁度いいんだよ!」
「じゃあ、空気清浄器買ってよ!」
ノリでつい、そう言ったら。
神田先輩がニヤリ、と嗤った。
「やっと、城田が頼ってくれたなー。よーし、オジサンが買ってあげよう!オジサンは、ケチじゃないからねー?」
げ、ケチって、根に持ってる?
「神田先輩、冗談でもオジサンって言わないで!私は先輩と一つしか違わないんだから!」
そう言うと、神田先輩は、大丈夫だまだ高校生に見える、ためしにセーラー服来てみろ、とアホな発言をしたから、タバコの空き箱を投げつけた。
「城田、最近随分感情的になったなー。前はこのての話題、冷たくスルーだったよなー?」
ゲラゲラ笑いながら、何気なく言った先輩の言葉に、ハッとした。
瀬野将効果だ…。
「さてと、昼いくかー?待ってるぞ、オッサンが。」
時計をみると、もうすぐ昼。
今日は昼を誘われている。
ため息をつくと、いくぞ、と書類を手にした神田先輩が先にたちあがった。